月明りの下で吸血鬼と共に

6/12
前へ
/12ページ
次へ
 ピョンピョンと軽々しく家々を飛び越え、どこかへ攫われた唯織。片腕で円を描いて、その中に唯織の身体が包まれている。 「さっきのはどういう事だ」  外の風を感じながら、さっき吸血鬼の呟きについて質問をしてみた。  あの妹の変貌ぶりと吸血鬼が放った『吸血鬼の毒を塗り込まれたか』という言葉がどうしても気になる。 「いや別に」 「僕の家族なんだぞ、教えて貰おうか」  案の定、吸血鬼は答える気が無さそうだから自分の家族だと言い返した。  その言葉が効いたのか、近くの屋根に止まり唯織を下ろす。吸血鬼は苦い顔をしながら語り出した。 「元々俺の種族は人間の言葉で云えば吸血鬼だ。だけれど人間が思うような吸血鬼とは少し違う。ただ吸って終わりとはならずに、毒を人間に盛らせる事が出来る」 「毒を、か?」 「嗚呼、その毒は人間の身体を支配し凶暴化する。俺らは半分生きている人間を吸いながら、そいつが死ぬまで繰り返したんだ」  待てよ。そしたら、と一旦話が終わるのを見据えて目を見開いた。 「僕にも、そうするつもりだったのか」 「いや君だと、望み通りになるから全然面白くない」  吸血鬼は肘を曲げて両手を左右に開く。やれやれ、と飽きられているみたいだ。  まあ、簡単に言うと毒があれば何度でもそいつを食える。つまり妹は誰かに毒を盛られ食料にされているみたいだ。  吸血鬼の話を続けていたら、新たな手がかりが分かった。  それは『助ける方法』だった。何で吸血鬼がその手段を知っているのかは不明だが、実際に方法はあった。  毒を体内に盛られた人間を助ける方法は二つ。吸血鬼らの人種が毒を抜くか、毒を盛った張本人を倒すかだった。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加