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「おかえり、リン
今日はいつもより早いね」
「そうかな?
いつもと同じ道で帰って来たんだけど・・・。雨が降りそうだったから早
足で歩いていただけだよ」
彼女の名前は『チョウ』。彼女から言われたからそう呼んでいるけど、実際チョウは普通の『人間』ではない。何故なら今も、自分の部屋の上を縦横無尽にフワフワと浮いているんだから。
それに、前に一度チョウが自分の部屋の中に居る時、父親が用事があって入って来た事があったんだけど、父親はチョウの存在が全く分からない様子だった。その後父親から自分の方を心配されてしまったけど、チョウ本人曰く、『幽霊』ではないらしい。
だとしたら、チョウは一体何者なのか。でもそれは、チョウ本人にも分からなかった。でも自分や家族に害を加える存在ではなかったから、自分はチョウと共に過ごす事に何も抵抗はない。
むしろ、友達の少ない自分にとって、チョウは数少ない話し相手にもなってくれた。若干世間知らずな一面があるチョウだけど、そんな彼女との毎日はいつも新鮮だ。
この前、自分が何気なく雑誌を読んでいると、チョウはその雑誌の中から、とある一枚のページを凝視していた。そのページは、最近とあるコンビニで新発売されたばかりの『タピオカドリンク』の広告。
チョウがあまりにも物欲しそうな顔で見ていたから、今まで全く興味の無かったタピオカに手を出した。買って来てすぐチョウに見せると、彼女はミルクティーの中を漂っているタピオカを見て、目を輝かせる。
でも、チョウは飲み食いができないと過去に言われた事があるから、そのタピオカドリンクは自分が飲んで処理した。でもこの事がきっかけで、自分はタピオカが好きになってしまう。
今まで物事にあまり興味を持たなかった自分に、両親から疑問の視線を受ける日々が続いたけど、チョウとの交流があってから、自分は色んな物事に興味を向けて動くようになった。
その変化自体周りは褒めてくれたし、チョウに色々なモノを見せる事が好きになってしまう。今もチョウは、自分がパソコンで見ている世界の絶景を、隣で興味津々になって見ていた。
父から貰った古いパソコンは、今まで殆どほったらかし状態。けどチョウに色々な画像を見せる事が多くなって、マウスを新しく自分の小遣いで買い直した。
受験勉強が大事な事はよく分かるけど、チョウと一緒に過ごす事で、自分のストレスは溶かされていた。チョウも自分の受験勉強を応援して、勉強最中は声をかけなくなった。
若干寂しかったけど、隣にいてくれるだけでも、自分はとても嬉しい。目を合わせる度にはにかんでくれるチョウは、自分にとって姉の様な存在だった。
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