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「やはり貴方も何もわかっていないですね」
ため息混じりに敦は吐き捨てた。
「どういうことですか?」
「再チャレンジって仰いましたけど、樹が登校できなくなったのは失敗なんですか?」
「あ……」
中西の口から不意に零れた。
「ええと、それはですね」
「弁解は聞きたくありませんね」
敦は強い語気で中西の言葉を遮る。
「貴方は聞こえのいいことは言うが、本心ではそんなこと思っちゃいない。不登校になった樹にすべての問題があり、いじめがあろうがなかろうが、クラス担任に問題があろうがなかろうが知ったこっちゃないと思ってるんだ」
「いえ、決してそんなことは……」
「そんなことがあるから言っているんですよ。貴方は、いや違う。貴方の勤めている学校は樹という個人について無関心すぎる。不登校というタグがついた生徒さえいなくなれば、それでいい。そんな考えの学校に行かせることはできません」
ピシャリと言い放つ敦を前に、ついに中西はぐうの音も出なくなった。
「見え方が変わっても、中身が変わらなかったら意味がない。当たり前のことでしょう。さぁお引き取りください」
中西は敦に言われるがまま、マンションの外へとスゴスゴと歩を進めていった。
「いいの?」
奥から敦の妻・星の声がする。敦は首を縦に振った。
「それより、見つかったのか?」
「うん。あそこなら、ってところ、あったわよ」
星の声に、敦は笑顔で頷いた。
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