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どうすれば良かったのか
「可哀想……」
樹がそう漏らす。
「そうだな。ただ……」
「ただ、何なの?」
敦の言葉を遮るように樹が問いを投げかけたる。
「ただ、ウサギには、こうならない方法はあったんじゃないかな?って思ってな。最悪の選択を避ける道は必ずどこかにあるはずなんだよ」
「あったの?そんな選択」
樹の問いに敦は深く頷く。
「ウサギは逃げるべきだったんだよ。おじいさんのもとからも、キツネやサルのところからも」
「なんで?おじいさん、死んじゃうかもしれなかったんだよ?」
樹は食ってかかる。
「キツネとサルは、食べ物持ってきてたんだろ?おじいさんはそれで助かったじゃないか」
「でも、キツネとサルは、みんなで一緒に人間になろうって……」
「じゃあウサギは死んだら人間になれるのか?」
「……なれないけど」
「だろう?それにもう1つあるぞ。人間は素晴らしい生き物なのかな?人間はサルやキツネやウサギが羨ましがるほど素晴らしい生き物だと、樹は本当に思うか?」
敦にまっすぐな眼差しを向けられ、樹は言葉に詰まった。
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