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カップラーメンが出来上がる三分は途方もなく長いくせに、
セーラーポークを観ている三分間は途轍もなく短い。
「あー、今日も面白かったな」
本能のごとく食べ続ける彼女の前に、細身のイケメンが遂に登場。
一秒で恋に落ちてしまった憑野うなぎは、イケメンとの恋を成就させることができるのかーー。
「さてと、ちょっとコンビニにでも行こうかな」
憑野うなぎがあんなにも美味しそうに貪るから、こちらまでお腹がへってきてしまった。
常人なら徒歩五分で済む距離を、今宵も徒歩十分を費やして移動する。
やれやれ、こうやって歩いているにもかかわらず、なんで痩せないのだろう。
ペヤングにはキャベツがあるし、
ポテトチップスはジャガイモだし、
牛丼には玉ねぎがあるし、
ピザにはトマトがあるし、
ハンバーガーにはレタスがあるし、
寿司は生魚だ。
ヘルシーな食材ばかり食べているはずなのに、どうして一向に痩せないのだろう。
憑野うなぎの気持ちが、僕にはよく分かる。
世の中は不公平だ。
大食いチャンピオンが細身の人ばかりなのはどうしてなのだろう。そんなことをされては、デブの立場がないではないか。
今宵は満月。
熱帯夜特有の風が、僕の肥えた身体をいじめぬく。
既に二分は歩いている。
身体中の至るところから汗が吹き出し、砂漠をさまよっているような感覚に襲われた頃、僕は『彼女』に出会った。
汗で視界が滲み、
空腹で頭はクラクラするが、見間違えるはずもない。
豊潤な月明かりが照らす、
豊満なあのシルエットは、『憑野うなぎ』そのものだ。
自販機の前で、ダイエットコーラをがぶ飲みしている。
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