セルライト伝説

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 さてさて、  目の前に広がっているのは天国か。  はたまた、地獄か。  幾人もの『憑野うなぎ』が、そのコンビニエンスストアを非情なまでに蹂躙していく。  弁当を、  おにぎりを、  パンを、  飲み物を、  お菓子を、  ホットスナックを、  コンビニスイーツを、  口にできるものは何でものべつまくなく、彼女たちは飢えた獣のごとく侵略していく。  この狂った夜に備えていた歴戦の傭兵達(つまり、選ばれしアルバイト達)が総出で商品を補充しても、  補充しても、  補充しても、  補充しても、  補充しても、  補充しても、  瞬く間にレジへと強奪されていき、  瞬く間に陳列棚は白旗を挙げていく。    レジはもちろん長蛇の列で、  店内は眩暈を覚えるほどの『憑野うなぎ』ですし詰め状態だ。  肉という肉が、たわわに揺れ合い、  汗という汗が、みだりに飛び交う。  まるで、東南アジアかどこかの刑務所を彷彿とさせる。  アルバイト達の悲鳴で埋め尽くされた甘い地獄に、僕みたいな愚鈍な豚が割って入るなんて、あまりにも過酷だ。  僕は戦利品を何一つ得ることなく、自分の寝床に撤退するしかないのであった。    
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