2人が本棚に入れています
本棚に追加
夜になった。
私は未だに体を休められるような場所を見つけられていなかった。
市場の周りにはホテルがあるが全て貴族が握っている。とても料金を払えるような額ではないことが明らかだ。
私は市場の片隅の少しひらけた場所に座り込んだ。
「寒い………………」
この国は日中と夜の寒暖差がとても激しい。
とりあえず風がしのげる場所に……
少しずつ風がしのげる場所を探すため歩いているがだんだんと意識が遠くなっていく。
(もう…………だめだ……………)
私は倒れこみそうになった。
このまま死ぬのかな……………
そのとき私の肩に暖かいぬくもりが触れた。
「大丈夫??」
とても優しい声が上からした。
そして私はゆっくりと顔を上げた
私はびっくりした。
声をかけてきたのは今日市場でぶつかった男の子だった。
「こんなところで何してるの?」
「…………家出してきたの。」
「は??家出って……お前両親とかいるって事だろ」
「親に売られそうになったの。だから逃げてきた。」
「それはこの国だと仕方ないな。」
「私は絶対にいや!!!」
予想以上に大きな声が出た。
静かな夜の街に響きわたった。
「私は働きたくなんてない!私の親は毎日夜遅くまで帰らないし毎日ものすごい数のあざが体中にたくさんあった。あんな目には……」
「それはお前のために働いてきてくれていたんだろ?」
それを言われると私は胸がいたんだ。
私の目からは自然と涙が流れる。
「それは………それはわかってる。私だってお父さんとお母さんのこと嫌いなわけじゃ………」
私は涙を止めようと必死で言葉がうまく繋げない。
両親がほんとは私を売りに出すようなことをしないような人のこと。私を愛してくれている人たち。そんなことは知っていた。この不平等な差別社会がきっと彼らの心を黒く染めていったのだろう。
「うんうん。わかった。」
そう言いながら彼は頭をそっと撫でた。
私はそれがとても落ち着くものだとわかると流した涙はいつの間にか止まっていった。
最初のコメントを投稿しよう!