いとしのジミー

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

いとしのジミー

 今日は息子とショッピング。  最近、近くにできた巨大ショッピングモール。オープニングセールも終わった平日、人ごみも、ちょっと落ち着いているだろうから、初めて来てみた。ちょっとゆっくり見て回れそうだ。  何にでも興味津々(きょうみしんしん)な息子とは手を繋ぎ、「ママから離れちゃダメよ!」と、キツく言ってあった。  ……のにッ!   ちょっと服屋さんで、ちょっと服を身体に合わせたりしている間に、どこかへ行ってしまった!  クゥ~~~ッ! 私としたことがッ! 私のバカバカッ!  速攻、サービスカウンターへ行き、迷子のお知らせアナウンスをお願いした! 「服装とか、できるだけ詳しく教えて頂けますか?」 「地味な服装だから、人に(まぎ)れちゃったら分かりにくいんですけど~……」 「色とか、思い出せる範囲で結構ですので、お願いします」 「え~っとですね……、今日は和装でして……」 「浴衣ですか?」 「いえ、金ピカの紋付(もんつ)(はかま)姿で、上等な雪駄(せった)を履いています」 「ほ~」 「で、髪型は殿様で、顔は白塗り、眉毛(まゆげ)所謂(いわゆる)麿(まろ)的な~みたいな感じです。あまり、特徴という特徴がなくて、ほんと、すいません!」 「いえいえ、特徴の(かたまり)のような気がしますけど……」 「服装とか特徴なさ過ぎて、表現的にアナウンスしづらかったら、ごめんなさい!」 「いえいえ、大丈夫ですよ♪ お任せ下さい!」 ー ♪ピン、ポン、パン、ポ~~~ン♪ ー 「迷子のお知らせを申し上げます。志村けんさんのバカ殿のカッコをした三歳のバカ息子を、……じゃなくて、失礼しました、三歳の男の子、四村(よむら)ケンくんを探しています」  と、アナウンスした途端、早速、サービスカウンターに電話が入った。 「はい、サービスカウンターです。……はい、……はい、あ、そうですか! ケンくんですか、はい、分かりました。お母様にお伝えしますね。ありがとうございます!」 ー カチャ ー 「ケンくん、見つかりました!」 「よかった~ッ! ありがとうございます!」 「いえいえ、すぐ見つかってよかったですね♪」 「はい~っ! で、ケンはどちらに?」 「タピオカドリンクの順番待ちをしている、女子大生さんたちを、一生懸命口説いてたそうですよ♪」 「あちゃ~♪」 「もうすぐ、係員の者がケンくんを、こちらへお連れしますので、今しばらく、ここでお待ち頂けま……、あっ、来られました!」 「もう~、ケンッ! ママから離れないでって、あれだけ言ってたのに、もう~! ほんと、皆さんに、ご迷惑とお手数をお掛けいたしまして、申し訳ございませんでした!」 「いえいえ、ご無事で何よりです♪」 「ケンも、皆さんに、お礼言いなさい!」 「ありやとーッ!」 「ケン、今日は、あんた、ママより遥かに地味な目立ちにくいカッコだったのに、皆さんが見つけて下さったのは、ほんと、偶然なんだからね!」 「はい、ごめんなたい!」 「あんた、お出掛けしたら、すぐ、チョロチョロどっかへ行っちゃうから、目立つように、今日は、お出掛け用に、もうちょっと派手目な服を買って、皆さんにご迷惑お掛けした分、売り上げに貢献しましょうね♪」 「わ~い♪ 派手目の服を買ってもらうのって、僕、初めてだね~♪ わ~い♪ うれしいな~……♪」
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!