月夜の変態紳士、白見さん。

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その日、理沙も遅く入った分の時間も終わりに近づき、店内の補充と消 費期限の再チェックにレジ金の点検をしていた頃。 何気なく入ってきた、カップルが、入口付近の自動支払い機を操作した あとに、店長の待機するレジで支払い中、もめだした。 「チケット代が安いと思ってたら、枚数足りねーじゃねぇかよ」 発券用紙とチケットを見比べながら、男がいう。 女はスマホをいじりながら、腕を組み、彼氏と思われる男に対して、ため 息まじりに呆れ顔をみせる。  「だーかーら、言ったでしょ?ライブハウスでもない規模で、二人で、 その金額はおかしい。確認した方がいい、って」 レジ前で言い合いをはじめたカップルに、困惑した顔で鈴木店長がなだめ ている。 クーラーも、ほどよく効いているはずの店内で、店長は、すでに汗だくだ。 「あのぉ…それでしたら、お預かりした現金を一度、お返し致しますので、 再度手続きされてから。」 両手をひらき、店長はできる限り、やんわりと声をかけている。  理沙はレジ待ちをしている他のお客さんに視線をやると、レジ点検作業 を中断し、立て札を下げ、こちらの方へ誘導をはじめる。 「すいませんお客様、こちらへどうぞ」 灰色スーツを着た小太りの男性が、安堵したような顔で商品を差し出す。  手早くバーコードを通し、袋づめをしながらも意識は隣のレジに向かっ てしまう。並びなおした他の客も同じようだ。 巻き込まれるのはごめんだが、ことの行方は気になってしまう。 悲しい人間の性といえば、それまでだ。  「今さら手続きしたって、チケット取れねぇよ!なぁ、何とかなった りしないの?番号とかはあるんだからさ」 店長は唖然としている。理沙も含め、他の客も同じだろう。 最近、ニュースで起きた、あおり運転の容疑者といい。この国のいい大 人たちは、どうなってしまったのか? 平気であり得ないことをいう態度に、開いた口がふさがらない。    「申し訳ないですが、お客さま。それは私どもに言うことではありま せんよ?ちゃんと、チケット販売元にでも連絡されてください」 店長が額の汗を、片手でぬぐいながら話すと。その男性客は舌打ちして、 返金のお金を奪いとると、足早に自動ドアをくぐって行ってしまった。 そのあとを、悪びれぬように女もつづく。相変わらずスマホに視線をう つしたままで。
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