月夜の変態紳士、白見さん。

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 店内の客は一気にひき、店内音楽がよく響く。 店長は、うなだれ、深いため息をひとつ、ばつの悪そうな顔で私にいう。 「まったく、たまらんよ。」 「ですね。あり得ませんね、あの客。」  沈黙のあと、店長が慌てて時計を見る。 「ああら、ごめんなさいね、保波さん。時間、さらに押しちゃったね? もう、あがっていいよ。あとは、僕が。」 「いえ、さっきのイレギュラーは、どうしようもないですから。レジ点 検だけ、あと少しなので、やってあがりますね?」 そう告げると、理沙は立て札を出しなおし手早く点検を再開した。  バイトをあがる頃には、夜中の10時過ぎだった。 理沙はひと駅分歩くことにした、何となくだが、さっきの気分の悪い客 とのやり取りもあり、外の風に吹かれたい気分だった。  やや薄暗い街灯を頼りに、シャッター通りの商店街をぬけ、なるべく 人が多い場所を選んで駅へ向かう。 滅多に歩かない道だが、数ヶ月前に開店していたはずの店も閉店の貼り 紙をしていた。  確かここ、テイクアウトもできるカレー屋さんだったかな…、そう記 憶をめぐらしつつ、駅前公園の入口にさしかかる。  ここを通りぬけたら、ショートカットにはなるな…。  公園の中を見つめる。公園は、さほど広くもない。 子供も減り、隅に見える錆びた感じのすべり台や、そのわきのブランコ、 薄暗さが気持ち悪い。 そのわりに、入口付近は明るい…振り返ると新しいマンションが建 っていた。  “カルム駅前通り”と、控え目についたプレート、クリーム色とチャ コールの二色で統一された壁は、どことなく品格を漂わせている。 エントランス前には、手入れされた観葉植物が並び、ライトアップされ た光の一部が、公園を照らしていた。    よく見れば植物の間に人がいる。年配の男性だろうか。 保波が公園に入るか迷っていると、細身の体をあずけていた男が、こち らに気づく。 植物の手入れでもしていたのだろうか?こんな時間に。手袋をして、ほ うきに塵とりを片手で持ち、白い袋を引きずっている。 男は保波の存在に気づくと、軽く会釈をし、エントランスの中に消えて いった。  理沙は気をとり直し時間を確認した。終電には余裕もあるけれど、 ここは早く駅に着いておきたい。 何より今日は、色々あった。覚悟すると公園に入る。
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