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公園の内部は真ん中に芝生があり、円形の通路とそれに添うように
低い柵、さらに内側に、腰の高さほどのツツジが通路に添って植えて
あった。
人気もなく、やはり暗い。保波は前傾姿勢になりながら足早にぬけ
ることにした。通路に添いながら公園の中程にさしかかった時。
それは一瞬だった。何かが自分の腰あたりに重い衝撃を与えたかと
思うと、保波は体ごとツツジの中に押し倒された。
バキバキッ。
視界が夜空をうつしていくのと同時に、冷たく生あたたかいものが理
沙の顔の半分をおおいつくす、声どころか息もろくにできない。
背中や腕に細くて硬い、ツツジの枝が絡んで突き刺さる。痛い、と
いうより熱い。
何が起きている?自分に起きていることがわからない。全身に痛みが
走る、重くて硬い何かに抑えつけられている。
相変わらず顔の半分ほどは、おさえられたまま。片眼の隅に映る丸黒
いものが、理沙を覗きこんでいた。
「ウゴクナ…ウゴクナヨ」
混濁する意識の中、はじめて、誰かが自分を抑えつけていると知った。
助けて助けて助けて、誰か、誰か…。
声にならない声を叫ぶ、涙で視界がゆがむ。一瞬、抑えつけられる力
が弱くなった気がした。重力の半分がなくなったような。
理沙は、ああああっ、と声にならない叫びと共に、足をバタつかせ
利き腕で目前の丸黒いものを全力で打ちつけた。
「ガアアアアッッッ」
鈍い音と共に、黒い大きな塊が、理沙の真横にくずれ落ちる。
理沙は、振り返らず飛び出す。視界の先の先に公園の出口をとらえ
た。あと、どれくらいある?百、それとも二百メートルくらい?
逃げる逃げる、逃げなきゃ逃げないと。ゆがんだ視界が変わらない。
理沙は腕をふっていた、痛みをがまんして、忘れて、ふっていた。
ふっているだけだった、立ちきれてなかった。腰がぬけガクガクと震
える足で冷たい芝生の上を這いずっている。
ガツン。愕然となったの同時、後頭部から背中におもい稲妻が走っ
た。地面にくずれおちると、また夜空がゆがんだ。
今度は頭の一点がガンガンと痛む、服が裂かれる音がする。
手があがらない、一瞬だけ相手の顔に焦点があった気がした。
「ああ…この人、見たこと…ある」
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