2人が本棚に入れています
本棚に追加
何が何だか、わからない。理沙は違う汗が頬をつたう感触がした。
「な・何ですか?この人、こんな格好で、私を襲ったんですか?」
できるわけがない。そもそも、まともに動くことさえ無理だ。素人目に
も断言できる。
「変態紳士。私たち警察が追っている人物だ。都市伝説化している人
物といっても過言ではないけどね」
理沙は初めて耳にする異様な言葉に絶句した。
「変態紳士…変態なのに、紳士なんですか?」
やや、のけ反る理沙を見据えながら、田中が言った。
「関わったと思われる人間の大半は、変態紳士について、何も語ろうと
しない。でも、足しげく通った結果。その筋の人間が一度だけ口にした」
“彼は弱きを助け強きを挫く。変態の仮面の紳士だ”と。
調書をおえた理沙は、駅前の交番をあとにし、カルム駅前通りのマン
ションへと向かうことにした。
途中、ショッピングセンターで箱詰めのお菓子セットを手土産がてら、
今回の恩人である管理人へ礼を言わねば。そう思ったからだ。
エントランスが見えてくると、手前の公園が気になった。まだ、日も浅
い出来事に、その場所に近づくだけで足がすくみそうだ。
マンションの前で深呼吸をする。少しでも冷静になりたい。
そう、集中していたら声をかけられた。
「おや…、あなたは、あの時のお嬢さん?」
最初のコメントを投稿しよう!