月夜の変態紳士、白見さん。

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 何が何だか、わからない。理沙は違う汗が頬をつたう感触がした。 「な・何ですか?この人、こんな格好で、私を襲ったんですか?」 できるわけがない。そもそも、まともに動くことさえ無理だ。素人目に も断言できる。  「変態紳士。私たち警察が追っている人物だ。都市伝説化している人 物といっても過言ではないけどね」  理沙は初めて耳にする異様な言葉に絶句した。 「変態紳士…変態なのに、紳士なんですか?」   やや、のけ反る理沙を見据えながら、田中が言った。 「関わったと思われる人間の大半は、変態紳士について、何も語ろうと しない。でも、足しげく通った結果。その筋の人間が一度だけ口にした」 “彼は弱きを助け強きを挫く。変態の仮面の紳士だ”と。 調書をおえた理沙は、駅前の交番をあとにし、カルム駅前通りのマン ションへと向かうことにした。 途中、ショッピングセンターで箱詰めのお菓子セットを手土産がてら、 今回の恩人である管理人へ礼を言わねば。そう思ったからだ。 エントランスが見えてくると、手前の公園が気になった。まだ、日も浅 い出来事に、その場所に近づくだけで足がすくみそうだ。  マンションの前で深呼吸をする。少しでも冷静になりたい。 そう、集中していたら声をかけられた。  「おや…、あなたは、あの時のお嬢さん?」
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