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理沙が見上げると、マンションの玄関に男が立っていた。髪は淡い白髪
混じりで、銀縁のメガネを指先でおさえ、ポロシャツとスラックスとい
う、いかにも動き重視な格好をした男。
たくわえた髭は、男の微笑みと共にピンと口角を上げ、静かな佇まいを
見せている。
身長はそこそこあるが、自分よりも軽いのではないか?そんな風に男
の印象を見ていた理沙は、あわてて頭をたれた。
「あの、その節は助けて頂き、ありがとうございました。これは、その、
つまらないものですが」
理沙は、階段をかけあがり。男の前に、先ほど買った袋を差し出した。
「これは、わざわざすいません。しかし、僕が助けたわけでもないんで
すよ?偶然、あなたを見つけ警察に連絡しただけですから」
男は、少し困ったような顔をした。
「いえ、助けて頂いたと思っています。どうか、受けとってください」
理沙は、そう念をおし、袋を男に渡した。
「あの、私、保波といいます。管理人さんなんですよね?マンションの
、交番で聞きました。シラミさん…で良かったですか?」
「そうですか…、では、お気持ちをありがたく。そうですね、僕は白
見といいます。交番に行かれたんですねぇ。とにかく無事で良かった」
白見の気づかいを受けて、理沙は一瞬、迷ったが…意を決して声にし
た。
「あの…、変態…変態紳士って、ご存知ですか?」
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