狼さんは月の夜に

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 彼女に合わないメルヘンな返事に面食らった顔をした後、やや間を空けて、慎重に言葉を選びながら和久が口を開く。 「何か……困ってることがあるの?」  真剣な面持ちの和久に、この真面目さが好きだなぁと美緒は呑気に考えた。 「そう……かな?」    途端に和久の声が強張った。 「俺で良ければ、話して。力になるよ」  美緒は思わず吹き出してしまった。 「和久くん、簡単に騙されちゃいそうですね、あはは」 「美緒ちゃん、俺を騙そうとしてたの?」  真剣な顔のまま、和久は続ける。  ただ和久の瞳に美緒を責めるような色はなく、どちらかと言えば少し寂しげだ。“茶化さないで”という静かな要求かもしれない。  美緒も自然に、笑顔を控える。 「……そうかも知れません」   「どういうことか教えてもらえる?」 「今は、内緒にしたいです」 「……嘘は嫌だな」 「……そうですよね」 「何を困ってるの?」  あくまで真面目な和久。  何を困っているのか。端的に言えば、年齢差の衝撃に耐え得る情愛の構築に難儀しているのであるが、そんなことは言えない。  しかし、困っていることを匂わせてしまった以上、某か納得させられる話をしなければ……。  しかし、打開策が思い付かない。 「……和久くんが」
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