5人が本棚に入れています
本棚に追加
彼女に合わないメルヘンな返事に面食らった顔をした後、やや間を空けて、慎重に言葉を選びながら和久が口を開く。
「何か……困ってることがあるの?」
真剣な面持ちの和久に、この真面目さが好きだなぁと美緒は呑気に考えた。
「そう……かな?」
途端に和久の声が強張った。
「俺で良ければ、話して。力になるよ」
美緒は思わず吹き出してしまった。
「和久くん、簡単に騙されちゃいそうですね、あはは」
「美緒ちゃん、俺を騙そうとしてたの?」
真剣な顔のまま、和久は続ける。
ただ和久の瞳に美緒を責めるような色はなく、どちらかと言えば少し寂しげだ。“茶化さないで”という静かな要求かもしれない。
美緒も自然に、笑顔を控える。
「……そうかも知れません」
「どういうことか教えてもらえる?」
「今は、内緒にしたいです」
「……嘘は嫌だな」
「……そうですよね」
「何を困ってるの?」
あくまで真面目な和久。
何を困っているのか。端的に言えば、年齢差の衝撃に耐え得る情愛の構築に難儀しているのであるが、そんなことは言えない。
しかし、困っていることを匂わせてしまった以上、某か納得させられる話をしなければ……。
しかし、打開策が思い付かない。
「……和久くんが」
最初のコメントを投稿しよう!