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「秘密の解消は信頼の話であって好意表明とは違うよね……」
ぶつぶつ言いながら顎を下げ、美緒を上目遣いで見る。
その顔が、甘えているようで可愛らしい。
つい美緒の顔が綻んでしまい、それを見た和久もフワリと微笑んだ。社交的な表層の笑みでない。
その朗らかな表情のまま、和久の手が美緒の顔にのびてくる。
指先が、美緒の頬をかする程度に触れた。何度か頬を行き来させた後、その指先は、ゆっくり、口許へ移動してきた。
「……キスは」
和久が、呟く。
キスはヤバイっ
トロリとした甘やかな視線を向けられて浮わついていた美緒の気持ちが、一気に引き締まった。
未成年に対する淫行とやらも、16歳ともなれば、双方からの合意とそれが察せられる状況さえあれば処罰対象にならないらしいことは、美緒も確認済みだ。
和久に接触することを決めたときに、ネットで検索しまくったのだ。
この時、未成年者の親が騒ぐケースもあるという記事も確認した。
年を取ってからできた美緒を両親は猫可愛がりしていたが、だからこそ過保護で厳しい。美緒の両親の勝手な訴えで、和久が拘束されて勾留……だなんて心底恐ろしい。
「キスはっ、だめですっ」
夢中で、和久の口を両手で覆う。
そんな状態で
「何で?」
モゴモゴと和久が口を動かすので、美緒の手のひらに和久の唇が触れてくすぐったい。
唇を変に意識してしまうので、くすぐったさ以上にむずむずと恥ずかしくて、そんな気持ちが物理的なくすぐったさを増長する。
美緒の焦りが判っていないのか、もしくは判っているからこそか。和久は、先刻よりゆっくりと、はっきりと、唇を動かして
「何で?」
再度、尋ねた。
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