3人が本棚に入れています
本棚に追加
おもかげ 1
あの子がわたしの家にやってきたのは半年前、夏が終わりに近づいた頃だった。
「素敵なピアノですね。……外で聞いて感激しました」
父に連れられて現れた少女はわたしの演奏を褒めると、「織江です」といって頭を下げた。
白磁のような肌、華奢な手足、長い睫毛。人形のようなその娘は、父によるとわたしの遠縁にあたるという。少しだけ身を固くしたわたしに織江は「しばらくの間、お世話になります」とまた頭を下げた。
「お前より三つ年上で、通信制の学校に通っている。絵を描くのが得意だそうだ。仲良くしてやってくれ」
父は織江を預かったいきさつも語らぬまま、長く使われていない部屋へと誘っていった。
最初のコメントを投稿しよう!