月明かりの下で、君に告げる。

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どうって? どうなんだろう。 好きだし、妹みたいに可愛いけど、果たしてコイツと同じくらいの熱量で俺はみのりんのこと「好き」なんだろうか。自信がない。 それなのに、覚悟もなく「好きだ」と言っていいのか? 「……可愛いと思うよ」 「なんだそれ」 答えに困った俺の言葉に、千葉は不満そうに鼻を鳴らした。生温い夕方の風が汗ばんだ顔を撫でていく。 「『可愛い』ってのは本心だし」 「バカか。お前」 千葉はますます苛立つ。 「こんな時まで責任感持ちすぎなんだよ」 吐き捨てられた言葉は、不器用だけど胸にくすぐったい。結構俺たちって解り合ってる。なんて言ったら、「絶対気持ち悪い」って嫌がられそうだけど。 照れ臭いのも伝わったのか、千葉は敢えてフンと鼻息を荒くした。 「言っとくけど、俺はあいつが好きだぞ」 「俺に言ったってしょうがないじゃん。本人に言えよ」 「……お、おう」 すぐ赤面する。夕日に照らされて赤いのに、それでもハッキリと分かる。 いいなあコイツは。正直で。 その分、相手打者に打たれた時にも真っ青になるんだけど、それは甲子園での戦いの途上で克服していた。 ひと回り大きくなった千葉。みのりんとうまくいってほしい、とも思う。それも本心だ。 進路も恋も宙ぶらりんな俺たちは途中で別れ、俺は自転車で、千葉は走って家路に着いた。
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