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「千葉が、みのりんが会ってくれないっていじけてたよ」
なんで俺はこんなこと言っちゃうんだろうな。もう笑えてくる。ライバルのはずなのに。
でもお前らがそんな顔するの、絶対良くないよ。
「だって、締め切りがあって」
みのりんはモソモソとモノが奥歯に挟まったような言い方をした。「締め切り?」と聞き直すと、彼女はハッと顔を上げた。真っ青だ。
「しゅ、宿題の!」
絶対違うよな。慌てて何とか取り繕おうとしてるのが見え見えだった。
「……そっか。夏は甲子園行ったし。宿題も溜まるよな」
「は、ハイそうなんです!」
「その締め切りっていつ?」
「9月の15日までに必着で……」
あ。
笑顔で固まるみのりん。
「小説かなんか?」
「な、ナイショです」
「他の奴にも言っちゃおうかな〜〜」
「!?……あの! えと……し、少女マンガ、です」
「へえ、すごいじゃんか」
俺は自転車を広場の端に付けて、鍵とチェーンを掛けた。みのりんが困った顔でソワソワしながら側に立っているのを感じる。
「ナイショにしてあげるから、俺と一緒になんか食べよう」
さすがに「デート」とは言えない。全く、こんなに図体でかいのにハートはノミのサイズだな。自分に呆れながらも、勇気を出して提案してみた。
「な、ナイショですよ?」
みのりんは俺のシャツの裾を引っ張りながら、目を潤ませて見上げてきた。
うおおっ! 拗ねて怒った顔、可愛い!
やった! デートだ!
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