夏祭り

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屋台はそう多くないものの、多くの人で賑わっていて楽しい雰囲気に包まれている。 「毎年やってる納涼祭なんです。ここでわたあめ食べるのが楽しみで」 もう味を想像したのか、みのりんの表情が綻ぶ。 「俺が買ってやるよ」 「えっ? そんな、いいですいいです!」 「てか、まず焼きそばとか焼きトウモロコシとか焼きイカとか食わなくていいの? いきなりデザート?」 俺の問いに、彼女は意気揚々と頷く。 「食前のオヤツです! デザートはカキ氷で」 「なるほど」 「じゃあ、それは私がご馳走しま……っ!」 勇んで歩いていた足がデコボコの足元につまずく。転びそうになるみのりんの体をしっかり受け止めた。 「…………」 心臓が壊れそうだ。これだけ密着したことはない。いつもポニーテールにしている髪は、今日はお団子に丸めてあって首筋がきれいに見えた。 鼻の奥がツンとする。 なんで、泣きたくなってんだろ。 名残惜しい気持ちで彼女を離すと、俺を見上げたみのりんが真っ赤になりながら、ずれた丸眼鏡を押し上げた。 「……手、繋ごう!」 「えっ」 「人、多いし!」 俺の顔も、多分真っ赤。有無を言わせず、彼女の手を取った。しっとりして柔らかい手。抜け駆けしてごめん、野球部のみんな。俺、今すごく幸せ。 俺たちはしがない高校生だから、そんなに金を持っているわけでもなく。それでも少し奮発して、二人でいろいろ分け合いながら祭り特有の味に舌鼓を打った。 今日は遠くで花火も上がる。俺たちは祭りの会場を後にして、そこから階段で上がっていく小高い丘に登った。
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