45人が本棚に入れています
本棚に追加
二人で並んで石垣に座ると、夜風が柔らかくみのりんの後れ毛を揺らした。
カキ氷用のストローみたいなスプーンで、氷をザクザク容器の中で突く。みのりんのはイチゴ。俺のはメロン味。
「描いてるマンガってどんなストーリー?」
唐突に尋ねると、みのりんの口から氷が飛び出した。見るからに動揺して俯いてしまった。
「せ、先輩が見たらあきれますよ。恋愛ベタベタの話なんて……」
言い訳するようにモソモソと口ごもる。
「そんなことないよ。俺たちだって、レンアイするし」
「えっ?」
途端に興味津々の顔を上げる。
女子って本当にコイバナ好きなんだな。
「先輩も? なんか、意外です」
罪深いな、みのりん。俺たちはいつもみのりんを取り合ってるじゃないか。なんで気づかないんだよ。
今度は俺が拗ねる番だ。ちぇっと口を尖らせて、でも苦笑いした。まあ、確かに恋愛って柄でもないしな。
「先輩に好かれる人は、幸せですね」
えっ?
驚いて見つめると、みのりんの頬に月の光が差していた。
「なんで、そう思うの?」
俺の素朴な疑問に、ふんわりと柔らかく微笑む。
「優しいから、です」
胸が熱くなる。
胃の辺りから上ってきた感情が鼻を突き抜けた。身体中の熱が顔に集まって、何も考えられないのに、部活の仲間たちの顔が脳裏に浮かんだ。
最初のコメントを投稿しよう!