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「西木は優しいよな」
自分は思い遣りの塊のくせに、キャプテンの菅野もそう言う。
「西木の優しさに甘えるなよ」
やつらの自分勝手な奔放さに困っていた時、そう言ってくれたのは、みんなを陰で支えてくれるレフトの服部。
「俺が胸張って補欠やれてるのは西木のおかげ」
控えピッチャーの橘。あまり出番はないけど、週に二回必ずあいつのボールを受ける。
球が鈍らないように無理やり投げさせてるのに、ありがとうと言われた。
「俺だって、24時間365日元気な訳じゃねえし。いいじゃん、時々優しくない西木も」
うちのムードメーカー竹村が、俺をからかうように笑った。
「犠牲にするなよ、自分の想いまで」
親の仕事手伝うために野球を辞めようとした時には、幼馴染みでライトを守る平原が言った。
「優しいのはいいけどさ。それで自分がつまんなかったら、意味ねーじゃん?」
「西っちの優しさって、大っきいよな」
強打者の柏田だって、プレッシャー感じない訳じゃない。打てなくたっていいよ、と言うと、柏田はそう言ってホッとしたように息を吐いた。
「言いたいこと言え! お前が言わなくて俺が打たれたらどうすんだよ」
長年のキャッチャーやってる俺とバッテリー組むことになった新米ピッチャー千葉。
「勘違いすんなよ。そんなの、優しさじゃねーぞ!」
じゃあ言うけど……って、本当のこと言うと、陰でめっちゃ落ち込んでたくせに。
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