月明かりの下で、君に告げる。

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そろそろ腐ってるだろ。キャッチボールしに行かねえ? 相棒の千葉から連絡が来たのは、俺が勉強に疲れて漫画を読み始めたのと同時だった。思わず噴き出す。 『お前だって、同じなくせに』。返事を送ってすぐにミットを手に家を出た。 8月25日。 ツクツクボウシの鳴き声のシャワーを浴びながら、自転車(チャリ)を飛ばす。向かう先は高校のグラウンド。 今年の夏は最高だった。仲間と泥だらけになって白球を追いかけ、甲子園のグラウンドでプレーした。準決勝まで行けた。大健闘だ。 そこまではいい。 その後の放心状態から、まだ抜けきれない。まだ気持ちは夢の中。大学受験に向けて、これまで培った忍耐力が発揮されるはず……だったんだけどな。正直、この先何がしたいのかさえ分からない。 汗だくになってグラウンドに着くと、千葉はもう既にストレッチしていた。Tシャツと半ズボンの俺とは違って、練習用のユニフォームなんて着てやがる。相手は相手で俺とは逆の思考をもって細い眉を顰めていた。 「どれだけ本気でやるんだよ」 リュックから取り出したボールを投げると、千葉はアーチを描いて飛んできたボールを素手で掴んだ。踏ん反り返って、偉そうに鼻を鳴らす。 「愚問だな」
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