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いなくなったあの子は
人気者のあの子がいなくなった。
女の私から見ても美人なあの子。
成績も良くて運動もできて、学級委員のあの子。
クラスの男子も女子も憧れているあの子。
同じくらい何でもできて一緒に学級委員を務めるかっこいいリョウ君が好きなあの子。
そのあの子が、いなくなった。
大人たちも、警察の人も、私たちも外出は禁止されていたけどみんなで集まってあの子を探した。
それなのに、あの子は見つからなかった。
「この町には有名な殺人鬼が住んでいて……」
「そこの墓地には人をさらう幽霊がいるんだよ」
「あの神社にはもともと神隠しが有名なんだ」
いろいろな噂が流れた。
でも、どれも本当のことには思えなかった。
あの子がいなくなってみんなが悲しんだ。
私ももちろん、悲しかった。
私だって、ちゃんと悲しがっていた。
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