めでたしめでたし

いなくなったあの子は

「俺と付き合ってくれないか？」
あの子がいなくなって一ヶ月。
私は、放課後の教室でリョウ君に告白されていた。
嬉しかった。
私だってリョウ君が好きだから。
けれど、わかっていた。
私がいなくなったあの子の代わりだということを。
噂でも、実際に見ていた限りでもあの子とリョウ君は付き合う寸前だったと知っている。
あの子がいなくなった寂しさの埋め合わせ。
あの子がいなくなったからこそ私はリョウ君の彼女になれるのだとわかっていた。
正直に言えばあの子がいなくなった時、少しだけ、ほんの少しだけ嬉しかった。
リョウ君と付き合えるチャンスが増える、と。
不謹慎だとわかっていたし、悲しんでもいた。
あの子がいなくなったことで手にした幸せ。
それでもリョウ君と付き合えるならいいと思った。
「……はい」
私はリョウ君に、そう返事を返した。