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「…ま、大丈夫だネ。で、春人、どっちだっけ、道」
「ここを右です」
お師匠様はそう言って突然道を外れました。先生がついていきます。
今まで通ったことがない道―――というよりも、ほとんど整備されていない獣道になりました。足場が斜めで、気をつけていないと滑り落ちてしまいそうです。
前をゆくお師匠様が笑って、
「右に大きな榊の木があるところが曲がる目印だよ。次は左手の大きな檜が目印だね」
「榊と…檜…」
彼岸花の獣道。木陰から月の光が漏れだす闇を、提灯一つを先導にゆきます。
何度か折れたり曲がったりしました。
辛うじて道だと分かるような道の連続。
紙垂が巻いてある大岩のところでは、一度戻ったりもしました。
その後岩を二周回ったりしたので、
「…お師匠様、これはどういう?」
「霊的な結界を張ってある。先程のところで一回迂回して、さらにこの岩を二周だよ。そうしないと、続く階段が出ないようにしてあるんだ」
「ま、乱獲不可避の月光百合だからねえ…それくらいの用心をするに越したことはないんだけどね」
緋乃先生の苦笑。果たして岩を二周すると、先ほどは木陰になっていてまるで山肌にしか見えなかった場所に、いつの間にか石段があって、上に続いていたので、私はびっくりしたのでした。
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