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夏の盛りを過ぎて、秋の気配もみえる、ある日の夕方のことでした。
「あかり、今日は満月だったね」
そうお師匠様に声をかけられて、私は少し首を傾げた後、朝の新聞欄を思い出しました。
「はい!そのはずです」
「今宵は晴れるね」
お師匠様は、店の扉ごしに、外を眺めやりました。真っ赤な夕焼けが、店の軒先まで光を忍ばせてきて、それが店の棚までも橙色に染めていました。
秋雨も音を立ててやってくる中で、ここ最近は見れなかった夕焼けであることに、私はその時はじめて気づきました。
「お洗濯もの、とりこまなくちゃですね」
「あかりはそうしてきてくれるかい。僕はもう店じまいしてくるよ」
「はい、わかりました」
私はそう答えました。
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