食卓にて

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「『月光百合』はねえ、すんごい貴重な薬草なの。この裏山に自生地があるんだけど」 「えっ」 夕飯は、先生も交えてのものになりました。 簡単ですけど、肉じゃがとほうれん草のおひたしと、ちょっとしたお刺身にお味噌汁。先生は「ここに来るとまともなご飯が食べられるから幸せだわあ」なんてことを言っていますから、普段は本当に簡単に済ませているんだと分かります。 でも、それで先生が幸せそうな顔をしていると―――生きててよかった、なんて思えるから。 私の作ったご飯で、私の命の恩人が、美味しそうにしている顔を見られるのなら。 ―――私はそれでいいのかな、なんて思っています。 先生は肉じゃがを口いっぱいに頬張って、それを呑み込んでから、 「『月光百合』ってのはねえ、霊草でね。ド田舎の山の中に生えてんの。でも日本はド田舎の山の中なんて幾らでもあったからさ。昔は…明治くらいまでは自生地なんて田舎にはいくらでもあったんだけど」 「乱獲されちゃってね」 「乱獲…」 お師匠様の言葉。私のオウム返し。 先生は頷いて、 「色々と曲者なのよ。まあこれからお師匠様が実演してくれるけどさ。下手げな収穫をすると枯れちゃうの」 「下手げな収穫…?」 「まあ、間違った収穫というか、ね。…なまじ良く効くんだその薬がね」 緋乃先生の苦笑に近い言葉。
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