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会いたくなかった
「葉瑠……」
それは俺がまだ、高校生だった時の事。俺は、葉瑠が好きだった。一年の片想いの末に、告白。
だが、結果は散々だった。振られた挙げ句に、俺が告白したことを学年中に言いふらされ、卒業まで恥ずかしい思いをした。
そんな俺を支えてくれたのが、杏樹だった。そうだ。側に居るのに慣れすぎて、いつの間にか、一番大切な事を忘れていた。
いつも杏樹に、救われていた。
俺が物思いに耽っていると。椿さんが、葉瑠に話しかけた。
「葉瑠さん……。あなたも、彼の事が好きなの?」
「「は?」」
葉瑠と同時に、声が出る。椿さんは構わず、言葉を続ける。
「とても、魅力的だものね……。直人くんは……」
椿さんが、うっとりとした目線を俺に向ける。思わずたじろぎながら、横目で葉瑠を見ると。葉瑠は少し、青い顔をしていた。
「……あたしは、別に! 杏樹じゃ、物足りなくて、乗り替えたんだって、思っただけ!」
相変わらず、失礼なヤツだ。でも今の俺に、葉瑠を否定する権利はない。気持ちが揺れた事を否定なんて、出来ない。
「そうなんだ……。わたしは……付き合いたかったな? 直人くん、と……」
椿さんの細い腕が、するすると俺の腕に絡まる。
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