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滑らかな腕の感触に、ドキリとしつつも、頭に浮かぶのは、杏樹の顔。
「でもね……? どうしても、杏樹の事が好きなんだって。直人くんは……」
椿さんが、不敵な笑みを浮かべ、葉瑠を見返す。葉瑠は顔を真っ赤にして、大声をあげる。
「へえー? 直人って、あんなガサツな女が好きなんだー。今なら考え直してやっても良いかなぁなんて、思ったんだけどねー!」
……まさか、本当、図星だったのか? 俺には杏樹が居る。こっちからお断りだ。
葉瑠は勝手に怒って、去っていった。でも、良かった事も一つある。葉瑠のおかげで、椿さんに変な事をしないですんだ。
「あの、椿さん──」
詫びを言うより先に。
「妹を。杏樹をよろしくね……」
椿さんは背を向けて、去っていった。それからしばらく、椿さんに会うことはなかった。
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