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月夜の日に
それは、月明かりの美しい夜の事だった。
小腹を空かせた俺は、近くのコンビニに出かけるため、川沿いを歩いていた。街灯もまばらな夜道に、人通りはない。
真っ暗な道の先に、とても美しい人を見かけた。月の明かりが、見守るように優しく、女性を照らしている。
女性は、無言で月を見上げていた。その大きな瞳から、はらりはらりと、雫がこぼれ落ちる。陶器のように滑らかな肌をなぞるように、ゆっくりと。
その姿はとても幻想的で、夢を見ているようなような気がした。
あまりの美しさに、目が離せなくなり、その場に立ち尽くしてしまう。
どれだけの時間、その女性を見つめていたのだろう? スマホの通知音で、はっと我に返る。通知は、帰りが遅いのを心配した、母からだった。
スマホから目を離し、辺りを見回すと。その女性はもう、どこにも居なかった。
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