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「宇佐美さん!」
デスクで書き物をしていると、背後から溌剌とした声が飛んでくる。自信に溢れた微笑を浮かべて近寄ってくる彼は、今日もネイビーのスーツをお洒落に着こなしている。
「あ、月岡さんお疲れ様です」
「これお願いできる? 経理に廻してって言われたんだ」
誰に頼んでもいいような仕事なのだけど、彼は必ず私に頼む。
「わかりました、やっときます」
「助かる。宇佐美さん几帳面だからさ」
目元を和らげた月岡主任は、親しげに私の肩を叩いて颯爽と経理課を出て行った。大体その後はいつもニヤけた顔の部長が私の背後を取っている。
「怪しいよね、君たちお二人」
「え?! 何がですか?」
質問で返すと、部長はさらに鼻の穴を膨らませた。
「えぇ〜言わせちゃうの〜? 気付いてる癖に〜?」
強情だなーと捨てゼリフを言いながら部長はデスクに戻っていく。
「もう、部長は……」
「いいじゃん月岡さん。お似合いだよ」
隣のデスクの女の先輩も部長に同調する。
「もう! 私たちそんなんじゃないんですってば!」
「はいはい。わかったわかった」
先輩は自分が野次を入れてきたにも関わらず私の反論を無視してパソコンに向き直る。飽きる程聞いてるからだろうか、もうその動作も流れるようだ。
……。
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