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美味しい梅酒
「……どうっすか?」
「うん……すっごくおいしい…!」
「良かった~!」
昨夜、ふと気になって、漬けてた梅酒を味見してみたら…
それが我ながらなかなかの出来で…
これはぜひとも翼先輩にも飲んでもらおうと、先輩を家に呼んだんだ。
「それにしても、後藤…
梅酒まで漬けてるなんて、すごいね。
僕、自家製の梅酒なんて初めて飲んだよ。」
そんな風に言ってもらえると、作った甲斐があるってものだ。
「梅もふっくらしてすっごく美味しいんです。
近いうちに、梅ゼリーを作って持ってきます。」
「わぁ、それは楽しみだ!」
翼先輩は、なんでも素直に喜んでくれるから好きだ。
「それにしてもおいしいね。」
「あ……」
翼先輩…さっきからぐいぐいいってるけど大丈夫かな?
お酒にはそんなに強くないはずだけど…
案の定、しばらくすると翼先輩の頬は赤く染まり、目は焦点がぼんやりとしてきた。
「後藤…知ってる?
今日は猫の日なんだって。」
「え?あ、あぁ、そうらしいですね。」
「猫の日なのに、猫がいないってどういうこと!?」
「え?」
「なんで、ここには猫がいないんだよう~」
あれ?なんだか様子がおかしい…?
「おい、後藤…!おまえ、今から猫になれ!」
「は?」
「『は』じゃない!おまえは猫なんだから、にゃん以外はだめ!」
これはやばいぞ…先輩…けっこう酔いが回ってる!
「先輩、お水…」
「にゃん以外はだめだって言っただろ!」
「え……」
仕方なく俺は、先輩の前に水を差し出した。
「にゃん。」
「にゃー!」
何を思ったか、翼先輩はコップの水に口を近づけて、そのまま飲もうとしてコップを倒し、テーブルの上を水浸しにして大笑いをしている。
(あ~あ~…)
梅酒って甘くて飲みやすいけど、意外ときついお酒なんだよな。
先輩すっかり酔ってるよ…失敗したなぁ…
結局、その日、俺は『にゃん』しか言わせてもらえず、翼先輩は好き放題して酔いつぶれてしまった。
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