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※
緋月は夢を見ていた。
寺子屋が、鮮やかな赤い炎に包まれていた。周囲を見渡せば、梨桜の他に若い男性と子どもたちが誰かを探しているようだった。
「いないわ、もしかしたら中にいるのかも──」
「危険だ、戻るなんて! 俺が行く、待っていてくれ」
若い男性が梨桜を止める。
「一人で戻る方が危険よ。私も行くから」
梨桜と、若い男性が炎の中に入っていく。緋月はあたりを見渡す。周りに雪はなく、薄紅色の花が咲き乱れていた。泣いている子どもたちは薄着の子もいるが、三割近くが厚着をしている。
(梨桜さんの未来……?)
緋色の民である緋月は一つだけ異能を持っている。それは未来を見る異能だった。先見の力と呼んでいるそれは、緋月が一度でも接触した者の未来を見ることが出来る。
(そっか、梨桜さんに触ったから。でもこれは……梨桜さん、死んじゃうんじゃ)
緋月が恐れていたことが起きていた。
大きな音を立てて、寺子屋が崩れる。
「――――!」
緋月は見えている未来の映像に手を伸ばしたが、なにも掴めなかった。
(梨桜さん!)
夢が遠ざかっていく。手を伸ばしても届かない。助けられない。
そのまま緋月は目を覚ました──。
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