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授業中、講義を真剣に聞いている市太の横顔を見る架。
視線に気付いた市太が振り向き
「何?また気分悪くなった?」
と心配そうに架を見返す。
「んーん。大丈夫。いちってカッコイイなと思って見てただけ」
不意打ちでそんな事言うなよ、架め。冗談でもドキッとするだろ。
市太は架の褒め言葉に弱い。
「バーカ。俺よりモテてるヤツに言われると腹立つだけだっつーの。見ろよこれ、架の非公式ファンクラブのアカウント。おまえまた盗撮されてるぞ」
「げっ、この前の寝癖めっちゃ酷かった時のじゃんこれ!」
「そーゆー問題じゃねぇだろ。バカ」
市太が架の髪をくしゃくしゃと撫でる。
どれだけ俺がモテても、市太以外は傍に寄ることも無理なのに。
俺は知ってる。市太が時々 女の子と遊んでることを。もう俺だけに構ってるほど暇じゃないだろうし、子供でもない。
いちの隣は居心地がいい。だけどずっとこうしているわけにはいかない。
市太がホモで、俺の事が好きだとか言ってくれたらずっと一緒にいれんのにな。なーんて・・・
「いちのがカッコ良くて優しいのにな。女って見る目ねぇ~」
「女は王子様みたいにキラキラで綺麗な男の方が好きなんだろ。・・・それに、俺が優しいのはおまえが幼なじみだからほっとけないだけだ。誰にでも優しいわけじゃない」
「いちの幼なじみで良かったわ。イケメンに優しくしてもらえてラッキー!」
お互いの心を知らない二人は、すれ違いながらも平和だった。
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