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もし一玖が架を好きになったとしたら・・・もし、万が一にでも架がそれに応えたとしたら・・・
そんなこと、ある訳が無い。だけど、架は俺以外の人間の匂いを初めて受け入れた。その相手がまさかゲイで、その上で『友達になる』と言い出すなんて。今まで想像すらしていなかった事が目の前で起きてる。
市太は、架の臭覚過敏が少しでも良くなれば と思う気持ちと同じくらい、架を独占したい気持ちが湧いてくる。
架の傍にいる為に、誰にも渡さないためには・・・
「架。実は・・・俺もおまえに言ってなかった事がある」
「なんだよ、いちまで。つーか俺ら、お互いに知らないことなんかねぇだろ。あっ! まさか いちまでホモとか言い出すんじゃねぇだろーな!?」
からかうように架は市太に肩をぶつける。
「そのまさかだよ」
「・・・は?・・・え、・・・え!?」
マジかよ市太!イヤだっておまえ女の子と遊んでんじゃん!
「一玖、って勝手に呼ばせてもらうけど・・・何度もこの駅で見かけてて、目を引くヤツだなって思って気になってた」
一玖の存在を知っていたのは本当だ。実際、一玖の外見は目を引くし目立つ。恋愛対象だと思った事は一度も無いけど。
「え、え!? なあ、いち・・・それ」
市太は一玖に惹かれてたってこと!?
市太が一玖に恋心を抱いているとすぐに理解する。
そう思わせるつもりで市太が嘘をついたとも知らずに。
なぜなら、幼なじみで親友である市太の好きな相手に、架が何かしようと思う性格では無い、と市太はわかっているからだ。
そうとも知らずに、架は二人の間で大きく動揺するばかりだった。
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