同じ月の下

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別れを切り出されたのは突然の事だった。 なんて事のない日の夕方に「これ以上は一緒に居られない、別れよう」とこちらの目も見ないでそう告げられた。 私には何故かわからなかった。 今までも些細な喧嘩はあれどそれなりにうまくやっていたと思うし、浮気なんてもっての他だ。 これまでも不仲になる事はあったが、お互いの不満だって言い合ってきた。その度に納得のできるよう、お互いが寄り添ってきた。 しかし私は、納得できない筈なのに何故か「わかった」と短く答えた。 自分のどこが悪かった、などと自責する事もない。ただあの人がそう決めたのなら、そうするべきだとその時は思ったのだ。 別れてからしばらくして、私には恋人ができた。その人とは驚くほど衝突もなく、ただ穏やかに仲を深めていった。結婚する事にも戸惑いはなく、そうしたいと自ずと思っての事だった。 ただ何故かこうして煌々と夜を照らす満月を見ていたら、その別れた人を思い出したのだ。
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