0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
おわりの日。
「…で、本題なんだけど」
彼がカップを弄るのをやめて、ひとつため息をついた。
あ、これが合図なんだ。とすぐに分かった。
ふっ、と息を漏らして、心の中で深呼吸する。
「…うん、なあに?」
動揺を見せないように、こてん、と首を傾げてみせる。
でもきっと、バレてるんだろうな。
唇の端はなぜかあがっていて、けれど、ひくりと引き攣っている。
私の作り笑いをしたときの癖。
前に、嫌いだって言われた、笑い方。
「…無理やり笑わなくていいのに」
半笑いでへらりと言われる。
「ごめんね、勝手に口角が上がっちゃうみたい」
ふふ、と声を漏らす。これも作り笑いのときの癖。
あ、そ。
興味をなくしたような、諦めたような声。なのに半笑いのまま。
こういう態度は、彼の嫌なとこ。
いつもいつも、ぎり、と心臓を掴まれる感じがするから。
「わかってると思うけど」
ほらきた。
泣くな。負けてたまるもんか。
だって知ってたもの。
用意だってしてきたんだから。
「別れましょうって、話なんだけどさ」
ちら、と上目遣いで、彼がこっちを見ている。
泣くな。
「どうですか?」
ぽろ、と、堪えきれなくて、水滴が目から落ちた。
最初のコメントを投稿しよう!