本章

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*** 「わー、凄い!」 「うわー、凄い!」 とあるアパートの一室から男女の声が重なって聞こえてきた。 女の方の声は千花である。 そして、男の声の持ち主は研究対照である同居人だ。 二人が発した言葉は、ほぼ同じだが意味合いは違う。 「こんな素敵なアパートに住めるなんて!」 「こんなボロいアパートに住めるなんて!」 次に重なった言葉に、当人同士ぱちくりと目を合わせた。 言っても、このアパートは普通の2LDKだが、千花が今まで住んでいたアパートは、築30年以上も経つボロいアパート。 アパート全体は黒ずみ所々ヒビが入っている2DK。 対して男の方は、超豪邸で何不自由ない優雅な生活をしてきた。 「そういえば、名前もまだだったね。」 爽やかに微笑む品のある男は、自分のことを颯真(そうま)と名乗った。 アパートのことをボロいと言った颯真に対して不満げな表情でなかなか名乗らない千花に颯真は促すように「君は?」と尋ねると、愛想悪く「千花」とだけ答えた。
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