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14話 おれもそうおもう
希望はぐったりとベッドに横たわっていた。
拘束からもおもちゃからもすべてから解放され、ようやく楽な体勢で横になれたが、失ったものがあまりに大きくて泣きそうだった。
弄ばれた。
そりゃもう、とても人様には言えないようなことばかりされた。
もう、お嫁に行けない。
責任取ってほしい。
シーツを被って、しくしく、と希望は震えている。
希望を弄んでいる間、ライはずっとケラケラと笑っていた。
可愛かった……。あ、いや、違う違う。
俺ばっかりえっちなことされて、えっちな気分になっちゃって恥ずかしい。悔しい。
あんの外道、いくら珍しくはしゃいでて可愛くても、絶対許さないんだから!
希望が思い出す限り、目隠しされず見ることができた範囲では、ライはずっとケラケラ笑っていた。
希望を弄んでいる間、せめて欲情してくれていればよかったのに、と希望は思う。
いやらしいことされているのに、希望だけが乱されて、ライはただただ笑っていたことが悔しいし恥ずかしい。
こんなことして人を弄ぶから、みんなに「なんとかして殺したい」って思われるんだぞこのやろう。
ライは今もまだ、玩具を手にとって眺めている。
その姿に、不安を覚えた希望だったが、ライは突然全部ぽいっと投げ捨てた。
「あー……、飽きた」
心底どうでもよくなったように、ベッドに置いてあった玩具も拘束具もすべて邪魔そうに落としてしまう。
乱暴に落とされる音に希望はびくっと震えた。
散々弄んでおいて、飽きたって言ってるんだけど……何なのこの人……。
……ん? おもちゃのことだよね?
俺じゃないよね? 俺じゃないよね!?
急に不安になった希望は、そっとシーツから抜け出た。
「あ、飽きたの……?」
「ん?」
「お、おれ?」
「は? ……ああ」
希望の表情と震える声で不安を察したのか、ライがふっと笑って、希望に近づく。
シーツから抜け出たものの、希望は身体が重くてだるくて、くったりと横になったままだった。
ライは、そんな希望の頬をするりと優しく撫でて、不安そうな顔を覗き込む。
「玩具の方だよ、馬鹿だな」
「う、うん……!」
希望がほっとしたように表情を緩めると、ライが笑みを浮かべたまま、耳元に唇を寄せてすり寄る。
「お前だけで良い」
「~~~~っっ!?」
低い声が耳に響いて、希望はぞくぞくっと震えて、顔が熱くなった。
ひぇぇ好きぃぃ!!
すごい! 自分に自信がないと言えない台詞だ!!
ライさんじゃなきゃ許されないよ!
あんなこともこんなこともそんなこともされたから許したくないけど!
許しちゃうかもしれない!!
希望が突然枕に顔を埋めて黙って悶え苦しみ始めたので、ライは首を傾げる。
不思議そうに見つめながら、ライは希望に覆い被さって、希望の髪を梳いた。
「お前は良さそうだったな」
「え?」
「あんなのが好きなの? ヘンターイ」
「すっ、すきじゃない!!」
希望は慌てて顔を上げて首を振る。
「可愛い反応してたけど」
「でも、すきじゃないっ!」
希望が少し怒ったように声を荒げると、ライは目を細めて、ゆっくりと首を傾けた。
うっすら笑みさえ浮かべて、子どもを諭すようにじっと見つめる。
「なんで?」
「っ……」
希望はむぅっと唇を尖らせながら、もじもじ、と恥ずかしそうにライから目をそらす。
「……だって……」
「なに?」
「っ……」
続きを促すように、ライが優しい声で聞き返すと、希望はじっとライを見つめた。
「……ライさん俺のことおもちゃみたいにして、遊んでばっかで、……笑ってるだけで……ぜんぜん……」
「ん?」
「……っ……ぜ、ぜんぜん……触ってくれなかった、から……!」
そこまで言って、希望はまた枕に顔を埋めてしまった。
言った後で、激しく後悔した。
ここまで破廉恥なことをされて、まだ触ってほしい、と強請るような真似をしてしまったことが、酷く恥ずかしい。
ライは希望の言葉の意味を考えているのか、少しの間黙っていた。
しばらくして、「……ああ」と何か気づいたように頷く。
口元に笑みを浮かべて、枕に顔を埋めたままの希望の耳元に唇を寄せて、呟いた。
「お前、俺がお前に欲情しないと、燃えないんだ?」
希望の顔も耳も、再び真っ赤に燃え上がる。
「そっ……! そうじゃ、なくてぇ……あっ……!」
希望が顔を上げて弁解しようとしたが、ライの唇で塞がれた。
やんわりと塞がれただけで、ゆっくりと離れていく。
髪を優しく撫でられて、また頬に、耳元に、何度も口づけが振り注いだ。
髪を撫でるライの手が希望の身体に触れるとそこからじわじわと熱が伝わっていく。
唇にもじっくりと何度も角度を変えてキスをされて、希望はふわふわと心地よくなっていった。
「こういうの?」
「あっ……んっ、うんっ……」
何度も犯され、散々弄ばれて疲れ果てていたはずなのに、また身体がじんじんと熱くなっていく。
酷い目にあったことは忘れないけど、ライに求められるのは嬉しい。
玩具に強制的に与えられた容赦ない刺激ではなく、好きな人に触れられて内側からじゅくじゅくと溢れていくような快感。それがたまらなく心地よく、蕩けていきそうだった。
気づけば、希望はうっとりと表情を緩めて、とろんと瞳を潤ませていた。
「……お前、素直すぎ」
おれもそうおもう、と希望は思った。
ライさんが笑った声さえ、気持ちいい。なんて。
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