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台風が来ていても朝から大雨・雷注意報が出ていても、大学は休みにならない。
私は傘を叩く強い雨音を聞きながら、昨日のうちに愛子ちゃんを見つけられて良かったとつくづく思っていた。もしも昨日発見できていなかったら、きっと愛子ちゃんの遺体は今頃濁流に運ばれて海へと流されていたことだろう。そうなったら、成仏できずに愛子ちゃんの魂は永遠に彷徨うことになってしまっていた。
「あの、すみません。辻堂 優さんでいらっしゃいますよね?」
大学の正門脇で私を待ち構えていたのは、愛子ちゃんの母親と同じぐらいの歳の女性だった。
どうやら、また一人、いなくなった子の親が助けを求めに来たらしい。早く捜し出して成仏させてあげないと。
台風だろうと何だろうと、死者は待ってはくれないのだ。
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