新しい依頼

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 人が一人、この世から姿を消したとしても、事件性がないと判断すると警察は動いてくれない。そうなると残された家族は、人探しのプロである探偵や興信所に依頼せざるを得なくなる。そして、その探偵たちが行方不明者を捜し出せなかった時、諦めきれずに家族が頼ってくるのが私たち【死者を捜し出せる美しすぎる姉妹】。……ということらしい。  一応言っておくと、(かおる)ちゃんと私は姉妹ではなくイトコだし、見た目はどうあれ薫ちゃんの性別は男だ。……今のところは。 「あの、すみません。辻堂(つじどう) (ゆう)さんでいらっしゃいますよね?」  台風で暴風雨が吹き荒れる中、大学の正門脇で私を待ち構えていたのは三十代後半ぐらいの女性だった。咄嗟に思ったのは、また子どもがいなくなったのかなということ。昨日、この人と同世代の夫婦の依頼を受けて、中学生の娘さんを捜し出したばかりだったから。  それでも、追いかけ回されてイヤな思いをしたことがあるから、ついつい警戒してしまう。ネットで少し話題になっただけなのに、わざわざ私や薫ちゃんを見に来る物好きな人たちもいるし、中には私たちを隠し撮りして動画サイトにアップロードしようとする人もいる。 「どちら様ですか?」 「それ、今言わないとダメですか? 仕事をお願いしたいんですけど」  女性の目が私の斜め後ろに逸れたせいで、私は自分が一人じゃなかったことを思い出した。  同じゼミの先輩である茅ヶ崎(ちがさき) 直也が、怪訝な顔で女性と私を交互に見ている。 「辻堂、仕事って?」
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