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「いやあ、薫さんも凄い! 二人とも本物の霊能力者なんですね!」
お腹を押さえながらも興奮気味な茅ヶ崎先輩の賛辞に、薫ちゃんは苦い顔をした。たぶん薫ちゃんは自分のことを霊能力者だとは思っていないからだろう。
「そうよ。本物の霊能力者を敵に回したら怖いんだからね? 昨日と今日、あんたが見聞きしたことは絶対に口外しないこと。あとで誓約書書いてもらうから」
薫ちゃんに釘を刺されたのに、茅ヶ崎先輩はキョトンとした顔で「え、もう親友に電話で話しちゃいましたよ」と言い放った。
「やだ、先輩! 静香さんのこと、人に話しちゃったんですか⁉」
私が焦って茅ヶ崎先輩に詰め寄ると、彼は「違う違う!」と両手を振って否定した。
「俺が話したのは辻堂のことだけだよ。さすがに静香さんや隼人さんについては他言してない。俺の就職先は中小企業だけど、BLACK VALLEYとどこでどう繋がってるかわからないから、万が一せっかくもらえた内定を取り消されたら大変だもんな」
「良かったぁ!」
安堵のあまりしゃがみこんだ私と違って、薫ちゃんは険のある声で「全然良くないわよ」と叫んだ。
「優のこと、なんて言ったのよ? 霊能力者だとか死者を捜し出せるとか?」
「はい、俺の後輩に凄い子がいるんだよって。ダメでしたか? 口コミで広まれば良い宣伝になると思ったんですけど……」
薫ちゃんの剣幕におどおどしている茅ヶ崎先輩を見たら、何だか気の毒になってきた。
彼は良かれと思って話してくれたのだろうし、実際、私たちの仕事はネットに広告を出せる類のものではないから、今までの依頼人が誰かに話すことで次の依頼に繋がっていた。
薫ちゃんだって、これまで依頼人に私たちのことを口止めしたことなどなかったはずだ。それがどうして茅ヶ崎先輩に限ってはダメなのだろう。
「宣伝してくれなくて結構。あんたは親しい人を亡くした痛みや喪失感をわかってないから、そんな風に安易に話を広めちゃうのよ。私たちの存在や仕事は、本当に困ってる人にだけ伝えて。その親友にも口止めしておいてよ」
なるほど、そういうことか。茅ヶ崎先輩も納得したようで、深く頷いた。
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