いなくなった子

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 イトコの薫ちゃんには死者を見る力はない代わりに彼らをむやみに寄せ付けない力があるから、薫ちゃんと一緒だとわらわらと寄って来た死者に縋りつかれることなく普通に歩くことが出来る。  死者たちが私に寄ってくるのは、この世に心残りがあるから。  その人たちの話を聞いて一人一人成仏させてあげたいとは思うけれど、一度に全部は無理。だから、こういう依頼があれば大学やバイトを休んででも捜し回って、何とか成仏できるようにお手伝いをしている。  私はボランティアでもいいと思っているけれど、社会人の薫ちゃんはきっちり報酬を要求する。まあ確かに、これを本業にしたいという薫ちゃんの気持ちもわからなくはない。死体の発見は早い方がいいからと昼夜を問わず捜索していたら、薫ちゃんは正社員の仕事をクビになってしまった。今ではバイトを転々としているけれど、私が大学を卒業するまでにこの仕事を軌道に乗せたいと考えているのだろう。私のために。 「つまりですね、この辺りは震災や空襲で亡くなった方々の霊が未だに彷徨っているところでして……」  不破夫妻への説明は薫ちゃんに任せて、私は再び愛子ちゃんのスマホを握りしめた。  愛用の品には残留思念が強く残っている。もしも愛子ちゃんがもう亡くなっているのなら、きっと彼女のところに導いてくれるはず。 「あ……」 「いた!? どこ?」  私の小さな呟きに反応したのは薫ちゃんだ。 「あそこ。橋の下」  橋の下には多くの魂が漂っていたけれど、人の形を成していたのはオフショルのTシャツにショートパンツ姿の少女だけだ。その服装は愛子ちゃんの失踪時の服装と一致する。  愛子ちゃんを怖がらせないようにそっと近づくと、ハッと顔を上げた彼女が自分の両親を目にして涙を浮かべた。
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