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「月の夜しかお会い出来ません」
クラスメートに紹介された女性のメールの文面に、俺は苦笑する。
ーーーーー
「籠りがちでね……」
そう言って俺に友人のメアドを渡した順子。
「いい子なんだけど。自分の気持ちを表現するのが苦手な子なのよ」
「友達になって欲しいのよ」
いつも通りの伏し目がちで、すだれの様な前髪の間から俺を見て順子はそう言った。
ーーーーー
「月の夜しか会えないとかってさ……」
順子は相変わらずすだれの向こうから俺の表情を覗くだけ。
「へー、ロマンチックじゃない」
正面からこっちをみようとしない順子に意地悪く質問する。
「んで、この友人の名前何時教えてくれんの?」
『月子』という恐らくはニックネームであろう名前しか教わっていないメアドの主。
「彼女がその気になったら教えてくれるんじゃない?」
机についた肘の上、手の甲に可愛い顎を乗せた順子は黒板を見たまま答える。
すだれが目元を隠して、表情を詳しくは見せてくれない。
俺はわざと順子を正面から見て問いかける。
「俺の月下美人はいつになったら笠を上げて素顔見せてくれるんだろうなー」
すだれ越しの順子の頬が朱に染まるのを俺は見逃さなかった。
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