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夏季休暇明けの出勤日、会社を休んだら上司の心象は悪くなるだろうか。
廃れたビジネスホテルのベッドで丸くなり、私は考えていた。
今更後悔しても遅い。それでも、〝帰ってこなければよかった〟という思いが頭をよぎる。
年に一度の帰省。新幹線や在来線を乗り継ぎ、私は久々に地元の町へ降り立った。
そこで凛と再会してしまったのは、不運としか言いようがない。
〝……マチ子?〟
驚いたようにそう呟いた凛は、私を学校から追い出したことなど忘れてしまったように明るく挨拶をし、私のスマートフォンをもぎ取った。
そして電話番号やメールアドレスを勝手にチェックしながら、笑顔を見せた。
〝ねえ。今からご飯でもいかない? 積もる話もあるしさ〟
……あの時、何がなんでも逃げていれば、今頃無事東京に帰れていたのだろうか。
『お疲れ様です。夏風邪を引いてしまい、明日は出勤できそうにありません。申し訳ありませんがお休みさせていただけますでしょうか』
そうメールを打ち、私は目を瞑った。
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