10.月曜の朝

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 これは……気をつけないと、うっかり「修太郎(しゅうたろう)さん」と呼びかけてしまいそう。その点、修太郎さんはそういうところの切り替えは(そつ)がない印象だから……私が気をつけてさえいれば安泰なんだろうな。  そう思ったら、思わず 「……実は、図星です。どうしたらいいでしょう?」  修太郎さんとのことを勘ぐられるよりはいいかな?と思って口早にそう言ってしまっていた。  それに対して、高橋さんは間髪(かんぱつ)いれずに「いつも通りでいいっしょ?」と言ってくださって。  その迷いのない答えに、思わず「え?」と聞き返したら、「だって酒の席でのことでしょ?」と言われて。  そうですね、と小さくうなずいたら「だったら無礼講(ぶれいこう)だし相手も何も言ってきやしませんって。いつも通りおはようございまーす!って堂々と挨拶(あいさつ)してやりゃーいいんですよ」とにやりと笑いかけていらっしゃる。 「有難うございます、そうします!」  高橋さんの笑顔に釣られて微笑みながら、私は下で偶然、彼と出会えたことに感謝した。  修太郎さんにも、変に気負わずいつも通りでいこう。  そう思えたから。  でも――。
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