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そう思って、恐る恐る背後を振り返ったら――。
口許を片手で拭いながら、修太郎さんが立ち上がられるところだった。
「え、うそ……」
起こったことを認めたくなくて、はからずそんな声がもれる。
修太郎さんは、私に何をなさったのかはおっしゃらなかったけれど、彼の今し方の行動で、何があったのかを察した私は、恥ずかしさに彼の方を見られなくなる。
視界の端で、彼が眼鏡を手に取られたのが見えて。何となくその仕草で、これ以上酷いことはされないような、そんな気がした。
修太郎さんは私の背後に再度かがみ込むと、ご自身のハンカチで、私の太腿を濡らしている残留物を丁寧に拭ってくださる。
私は修太郎さんが背後におられる間、どうしていいか分からず、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
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