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「お父様。私、健二さんとお話をしたいのですが……連絡先を教えていただけますか?」
お風呂で身体をさっぱり清め終えると、私はその足でお父様のところへ行って、そう切り出した。
今までこういうことを言わずにきたこと自体、おかしいのだと、どうして気付けなかったんだろう。
私はいつも健二さんからの連絡待ちで……その連絡にしたっていつもお父様任せ。じかにお話させていただいたのは、先日のお電話が初めてだなんて……。
そんな状態を、どうして何の疑問も覚えずに、甘んじて受け入れてこられたんだろう?
私は健二さんを許婚と称しながら、その実、彼自身のことを見ようとはしてこなかったんだと思う。
「やぶから棒にどうしたんだい?」
なんの前置きもせずにそんなことを切り出したものだから、お父様を驚かせてしまったみたい。
「私、市役所の皆さんからお尻を叩かれてしまいました。もう大人なのに……何でもかんでもお父様に頼りすぎてるって。言われるまで気付けなかったのも恥ずかしかったですし、気付かせて頂いたからにはいい加減、自分のことは自分でやらなきゃって反省したのです。だから……健二さんにも私自身が行動して、ちゃんと向き合いたいなって思ったんです」
たくさんたくさん理由を並べたけれど……その根元となった理由の、好きな人が出来たことは言えなかった。
でも、それでもいいかなって思ってしまって。
(まずは健二さんとお話させて頂いてからなのです)
お父様やお母様、そしてあちらのご家族へは健二さんとお話が済んでからでも遅くないはず。
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