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「本心を言うとね、日織さんは僕の彼女です、とみんなに見せつけたいくらいです……」
まっすぐ私を見つめて告げられた修太郎さんの言葉に照れてしまった私は、赤くなった顔を隠したくてうつむいた。そんな私の耳元へ、修太郎さんが唇を寄せておっしゃる。
「――そうすれば、悪い虫も寄ってこないでしょう?」
「しゅっ、修太郎さんっ」
さすがにお互い許婚のことが解決していないのに、それは良くないと思う。
吐息を吹きかけられてぶわりと熱を持った左耳を押さえて、思わず一歩後ずさる。
修太郎さんは、そんな私を楽しげに微笑をたたえて見つめていらして。
私は彼に見つめられただけでドキドキと胸が苦しくなってしまう。そのままではいけない気がして、慌てて鞄を持つ自分の手元に彷徨わせるようにして視線を逃がした。
「……わ、私、携帯の契約が終わったら、健二さんに連絡してみるつもりです」
意を決して彼の方を見つめてそう言うと、「契約後一番最初に電話をする相手は僕じゃないんですか?」と渋い顔をされる。
「あ、そ……それはっ、もちろんそのつもりですっ。健二さんへのお電話はその後の話で……」
慌ててそう言ったら、クスクスと笑われた。
「ごめんなさい。分かっていて言いました」
眼鏡のつるを片手で押し上げながらそうおっしゃるのへ、小さな声で「意地悪……」とごちてから、
「修太郎さんの方は大丈夫なんですか?」
今まで聞きたくてもなかなか言えなかったことを思い切って聞いてみる。
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