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「私の番号、ちゃんと通知されてましたでしょうか? ――あのっ、正直まだ使い方がよくわかっていなくてっ」
言うと、『大丈夫ですよ。ちゃんと表示されていました』と返ってきてホッとする。
『ところで日織さん、今どちらにおられますか?』
修太郎さんが聞いていらっしゃるのへ、doconoショップ近くの公園名を告げる。
「多分……タコ公園の愛称で皆さんが呼んでおられる公園かな?って思います」
公園のど真ん中にドン!と鎮座する大入道のようなタコ型滑り台の黒々としたシルエットを見ながら付け加える。
修太郎さんは公園緑地係の係長さんだから。市内なら、公園の名前や、最悪設置された遊具の特徴を言うだけで、場所をすぐに把握してくださる。
(両方告げた今は、きっと鬼に金棒なのですっ)
『もう暗くなってきてるでしょう? そこは人通りも余り多くないですし、すぐに出ましょう。話しながらのほうが安全ですから通話はこのまま。あ、でも日織さんに電話代がかかりますし、やっぱり一旦切りましょう。すぐ僕からかけ直しますので応じてくださいね。――いいですね?』
そんな感じで矢継ぎ早に話される修太郎さんが何だか珍しくて、私は気圧されるように思わず「はい」と答えていた。
私は修太郎さんの言いつけを守って、すぐにベンチから立ち上がる。
それと同時にプツッと通話が切れて、ツーツーとビジートーンが聞こえてきて。
(あ、切れてしまったのです……)
と思うと同時にすぐに着信が。
(修太郎さん、素早いっ)
驚きながら通話ボタンを押すと『日織さん、大丈夫ですか? 変なのに絡まれたりしてないですか?』と修太郎さんの声。
つい今し方電話を切ったばかりなのに……と思ったら、おかしくて笑いが込み上げてきた。
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